与那国語の動詞3:活用パターンとその見分け方(2)

・活用パターンの判断:完了形から

完了形に使われる接辞(完了接辞)はa, ya, u, yuの4種類あり、a系かu系かは動詞の意味によって概ね決まります。命令形だけでは活用パターンを決めきれない場合、完了形も知っておかなければ活用パターンを特定できません。

 

命令形語幹がk, g, ŋ, r以外の子音で終わっている場合はC/YAクラスでした。Cはconsonant(子音)のCでしょうが、YAはこのクラスの動詞は完了形にyaを取るという意味です。

tatun(立つ)⇒tat-i(立て)⇒tat-ya-n(立った)

 

1.K小グループの細分類

命令形語幹がk, g, ŋで終わる場合、この小グループです。

そのうち、命令形語幹がk, gで終わるものはK/YAクラスK/Uクラスになります。どちらの小グループになるかは、完了形を見なければなりません。例えば「裂く」と「咲く」はどちらもsag-iという命令形を持ちますが、完了形はそれぞれsat-ya-nとsag-u-nという具合になります。よって、「裂く」sagun(K/YA)、「咲く」sagun(K/U)ということがわかります。

一方、命令形語幹がŋで終わるものは、ŋ/YAクラスに決まります。「配る」haŋunは命令形haŋ-iなのでŋ/YAクラスで確定します。命令形を見る必要はありません。

2.VR小グループの細分類

命令形語幹がarurで終わる場合、この小グループです。

そのうち、命令形語幹がarの場合、AR/Aクラスに決まります。「濡れる」ngarunは命令形ngar-iを持つので、AR/Aクラスで確定です。

一方、命令形語幹がurの場合、UR/UクラスUR/WAクラスに分かれます。「成長する」hudurunは命令形hudur-iを、「作る」kkunは命令形kkur-iを持ちますが、完了形はそれぞれhud-u-n, kkw-a-nとなります。語幹の形にも注意が必要です。

3.IR小グループの細分類

命令形語幹がirで終わる場合、この小グループです。この小グループは少々厄介です。

完了形はu, ya, yu, aの4種類、いずれも取る可能性があります。クラスはIR/Uクラス、IR/YAクラス、IR/YUクラス、UIR/WAクラスの4つあります。

動詞終止形(直説形)―命令形―完了形―クラス

「忘れる」bacirun, bacir-i, bac-u-n IR/Uクラス

「する」khirun, khir-i, kh-ya-n IR/YAクラス

「行く」hirun, hir-i, h-yu-n IR/YUクラス

「覚える」ubuirun, ubuir-i, ubw-a-n UIR/WAクラス

以上の場合、完了接辞を見ればどのクラスか特定できますが、UIR/WAクラスは名称が変則的になっています。このように変則的なのは、もともとubui-a-nという形が想定されており、そこから音韻変化(uiaの真ん中のiは母音に囲まれているので省略される⇒ua⇒短く発音されてwaとなる)した結果だと考えられています。ubuirunの語幹はubuir-とubui-の2種類で、ubw-のような形は派生的に生じるものだという発想です。

4.Vグループの細分類

命令形語幹が母音で終わる場合、このグループです。まず小グループに分解しなければなりません。

4-1.V小グループ

完了形語幹の末尾がsでないものはこの小グループです。そして完了接辞はどちらもaを使いますが、完了形語幹の末尾がwで終わっていなければA/Aクラス、末尾がwで終わっていればU/WAクラスです。

直説形―命令形―完了形―クラス

「食べる」hun, ha-i, h-a-n, A/Aクラス

「休む」dugun, dugu-i, dugw-a-n, U/WAクラス

このdugunも変則的なクラス名ですが、dugu-a-nからua⇒waのように変化してdugw-a-nという形ができると思われます。dugunの語幹はdug-とdugu-の2種類と想定されます。

4-2.VS小グループ

完了形語幹の末尾にsが含まれていればこの小グループです。ただし完了接辞はどちらもyaを取りますので、再び命令形を参照しなければなりません。命令形語幹がaで終わっていればAS/YAクラスuで終わっていればUS/YAクラスになります。

直説形―命令形―完了形―クラス

「炊く」magan, maga-i, magas-ya-n, AS/YAクラス

「干す」hun, hu-i, hus-ya-n, US/YAクラス

クラス名にSが入っているのは、このクラスの動詞の語幹が中止形と完了形において変則的にsを持っていることを示しています。

 

以上で、規則動詞の活用16パターンを分類することができます。