与那国語の代名詞1:人称代名詞
代名詞のうち、私、あなた、彼/彼女などにあたる言葉、人称代名詞を紹介します。
・一人称
私:anu(下降型)
私たち(除外形):banu(下降型)/banunta(下降型)
私たち(包括形):banta(下降型)
ここで、除外形と包括形について説明します。除外形は「聞き手を含まない我々」で、包括形は「聞き手を含む我々」です。日本人が中国人に対して「我々日本人は」と言う場合なら除外形を使います。一方、日本人が中国人に対して「我々アジア人は」と言う場合なら包括形を使います。標準語では謙譲語に「わたくしども」という表現がありますが、これは自分の側を下げる表現なので聞き手を含まず、除外形です。
・二人称
あなた:nda(高型)
あなたたち:ndi(高型)/ndinta(高型)
ところで、-ntaという言葉が何度か出てきていますが、これは「~たち」のような意味で複数を表します。人称代名詞以外に、普通の名詞にも付きます。agami(子供)に対してagami-nta(子供たち)、nni(お米)に対してnni-nta(お米など)、khuma(ここ)に対してkhuma-nta(ここらへん)など。日本語の「たち」と違い、生物以外の名詞や場所に対しても使われます。
・三人称
彼/彼女:khari(高型)
彼ら:khantati(低型)
この複数形tatiは「たち」と同じですね。また後の回で書きますが、このkhariは「あれ」という意味もあります。
標準語の会話で「彼」という言葉はあまり使わないと思います。与那国語では「あの人」を指す言葉としてkhanu-ttuがあります。