与那国語の動詞11:中止(3)
中止形の続きです。
<datana:しながら>
ttuhaŋka kh-i-datana bara-ta-n.
恥ずかしがりながら笑った。
*恥ずかしがる ttuhaŋka khirun.(恥ずかしさする)
*笑う barun A/A
<nki:せずに/しないで>
これは「否定継起」と呼ばれるもので、「~して」の「~」部分の動詞が否定形である場合に用いられます。
amb-anu-nki hir-u-n.
遊ばずに帰る/行く。
amb-i hir-u-n.
遊んで帰る/行く。
*遊ぶ ambun C/YA
<ndi:~しに>
目的を表します。
amb-i-ndi hir-u-n.
遊びに行く。
<形容詞語幹 + khi + 動詞>
「~そうに…する」の意味になるようです。
syana kh-i nind-i bu-ta-n.
嬉しさ して 寝て いた。
嬉しそうに寝ていた。
*うれしい syanan 形容詞
<中止形言い切り>
次に、中止形の非接続用法を見ましょう。これまでは<中止形+ i + 助詞/補助動詞>という形でしたが、中止形で文を切ることができます。
ma ug-ii?
もう起きた?
ma ug-i.
もう起きた。
*(朝)起きる ugirun IR/YA
この表現は以下の論文を参考にしています。
伊豆山敦子「琉球語*-i(自動詞する)の文法化」『日本語の研究』第1巻3号2005.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nihongonokenkyu/1/3/1_KJ00004553318/_article/-char/ja/
↑ページ右側の「PDFをダウンロード」ボタンからダウンロードして読めます。
この論文では、中止形言い切りの形が、話者の認識に関係なく、行為が出現したことだけを示し、質問・問い返し・現状への言及などに使われるとしています。しかし私には、これが過去形や完了形とどれくらい違って、どれくらい重なるのかピンと来ていないので、今回は「そういう言い方もできる」という程度にとどめておきます。あしからず……。
*基本相、進行相、継続相(概ね直説形、進行形、完了形に対応)については以下
橋尾直和「与那国方言のテンス・アスペクト」『高知女子大学紀要』人文社会科学編43巻1995年
今のところPDFはありません。