与那国語の動詞6:受身、条件

前回に引き続き、動詞接辞を説明していきます。今回は活用表の3つ目と4つ目、受身と条件です。

・受身 される

受身形の接辞は-arir-しかありません。「~に」の部分には助詞=niまたは=nkiを使います。

khanu agami=ya sinsi=nki iccin humir-arir-u-n.

あの子供は 先生に いつも 褒められる。

*humirun ほめる IR/YA

 

過去形は-ari-ta-nとなります。

khari=ni nn-ari-ta-n.

彼に見られた。

*nnun 見る C/YA

 

「~(さ)れている」は、「いる」にあたる動詞bunを使って、-ari-bu-n.と表現します。

その過去形「~(さ)れていた」は-ari-bu-ta-n.となります。

ututu=ya nai sinsi=nki kundu ndir-ari-bu-n.

弟は 今 先生に 怒られている。

*kundu ndirun 怒る IR/YAまたはIR/U(意志性動詞なのでおそらくIR/YA)

iccin humir-ari-bu-ta-n.

いつも褒められていた。

 

以下のように、直接動作を受けるわけではないけれども被害を表すという場合にも受身を使うことができます。

agami=nki nag-arir-u-n.

子供に泣かれる。

*nagun 泣く K/YA

 

・条件 ~ので、~すれば

接辞は-yaのみです。なぜか母音語幹のVグループ(A/A, U/WA, AS/YA, US/YA)にはこの形がありません。理由は不明です。状況形で代用できるのでしょうか?

似たようなものに「状況形」がありますが、筆者もよくわかっていないので、実際に収録されている例文を書きだします。

(32)a. gaku ma simar-ya da=nki khais-i hir-arir-u-n.

学校 もう 終わる-ので 家=に 帰っ-て 行ける(帰れる)。

学校はもう終わるので家に帰れる。

*simarun 終わる AR/A(おそらく)

*khaisi hirun 帰る IR/U

(14) da=ni bur-ya hai./da=ni bur-ya nsa-n do.

家=に いれ-ば よい。/家=に いれ-ば よい よ。

家にいなさい。

*bun いる 不規則活用

*nsan (形容詞)よい

[出典]

(32)a『琉球列島の言語と文化-その記録と継承-』第3部第4章「ドゥナン(与那国)語の簡易文法と自然談話資料」

(14)『琉球諸語と古代日本語-日琉祖語の再建にむけて-』第3部第12章「ドゥナン(与那国)語の動詞形態論」