与那国語の動詞12:完了(1)
動詞の基本の最後は、活用表の一番下に載っている完了形です。日流語族の中には過去形と完了形の違いがはっきりしているものもありますが、与那国語に関してはまだよくわかっていないようです。
また与那国語の完了接辞は-(y)a-, -(y)u-の4種類あり、概ね-(y)a-が動作主性の高い動詞に、-(y)u-が動作主性の低い動詞に使われる傾向にあるという話でした。
kabi sat-ya-n.
紙を裂いた。
*sagun K/YA 裂く
guma-ru hana sat-u-n
小さい花が咲いた。
*sagun K/U 咲く
「使役+完了」を作ることができます。
barasa-ru agami dugati=ni tat-am-ya-n.
悪い子供を廊下に立たせた。
ここで「立たせる」はtat-amir-u-nですが、使役接辞-amir-自体もまた動詞語基を作り、それ自身が活用しています。
同じように「受身+完了」です。
khari=ŋa itiban=ni irab-ar-ya-n.
彼が一番に選ばれた。
*irabun C/YA 選ぶ
さらに「使役+受身+完了」もできるでしょう。
khanu agami=ya dugati=ni tat-amir-ar-ya-n.
あの子は廊下に立たせられた。
実は、完了接辞も動詞の語基を作ることができます。使役や受動の接辞と違って命令形・禁止形・勧誘形を取ることはできませんが、直説形・連体形・状況形・条件形を取ることができ、かつ現在と過去に分かれます。本項の一番最初に挙げた例は「完了-現在-直説」の結びつきです。
・現在完了直説(再掲)
kabi sat-ya-n.
紙を裂いた。
*sagun K/YA 裂く
guma-ru hana sat-u-n
小さい花が咲いた。
*sagun K/U 咲く
・現在完了連体
kica h-a-ru i
さっき食べたご飯
・現在完了状況
suŋuci dum-ya-ba
本を読んだら
・現在完了条件
suŋuci dum-ya-ya
本を読んだら
さて、これらを過去完了にするのは簡単です。完了接辞の後ろに過去接辞-ta-を挟みます。
kabi sat-ya-ta-n
紙を裂いた。
kica h-a-ta-ru i
さっき食べたご飯
suŋuci dum-ya-ta-ba
本を読んだら
suŋuci dum-ya-ta-ya
本を読んだら