与那国語の動詞10:中止(2)

前回に引き続き、中止形を用いて作る表現の解説です。

 

<minun:ない>

A:maa dum-ya-n?

B:madi dum-i minu-n.

もう読んだ?(完了形)―まだ読んでない。

単に「読まない」であれば、dum-anu-n.とするところですし、現在進行の「読んでいる」はdum-i bu-n.ですからこれを否定形にすると「読んでいない」dum-i bur-anu-n.となりそうですが、そうではないです。これは「まだ」読んでいないという状況なので、現在進行の否定dum-i bur-anu-n.=「今まさに読んでいるというわけではない」とは違います。

minunは形容詞の否定形にも使われます

thaga minu-n 高くない

この場合、動詞の否定接辞-anu-を使うのは誤りです。

 

それ以外に「存在の否定」という役割があります。

khumi=ya a=ŋa munu=ya minu-n.

ここには私のものはない。

khu=ya a=ŋa munu=ya ar-anu-n.

これは私の物ではない。

ar-anu-nは「~である」(コピュラ)を表す動詞anの否定形です。「~である」の否定ですから「~ではない」と言う意味になります。一方、minunの方の文は「存在の否定」つまり「~は存在しない」という意味です。

 

<busan:したい>

anu=ya maabin giha-i busan.

私はもっと頑張りたい。

*頑張る giharun AR/A

 

<an:ある>

u=ya maa kh-i an do.

それはもうしてあるよ。

「結果相」と呼ばれているものです。この場合、誰がしたのかは不明であることが多いです。誰かがしたなら、「それはA君がしたよ」などと言うところですから。

 

<ti:~して>

<ndangi:~しよう>

taigu ccimas-i-ti da=nki h-i-ndangi.

早く終わらせて家に帰ろう。

*済ます、終える cciman AS/YA

*帰る hirun(=行く) IR/U

 

<bi:~したので>

abir-ar-i-bi su-ta-n.

呼ばれたので来た。

*呼ぶ abirun IR/YA

⇒受身形:呼ばれる abir-arir-u-n.

arir-u-nは少なくともIR活用なので中止形はar-iと判断できます。

*来た sutan 不規則。「来る」はku-n.不規則形については後で書きます。