与那国語の動詞5:使役、否定

以前提示した活用表では、規則活用に11の活用形、不規則活用に連体形を加えた12の活用形が示してありますので、今回は最初の2つ、使役と否定を紹介します。

なお活用表ではクラスがC/YA, K/YA, ŋ/YA, K/U, AR/A, UR/U, UR/WA, IR/U, IR/YA, IR/YU, UIR/WA, A/A, U/WA, AS/YA, US/YAの順に並んでいますので、「C/YA~K/Uでは接辞itaを取る」と書いてあればC/YA, K/YA, ŋ/YA, K/Uの4クラスで、動詞語幹-接辞itaという作りになることを意味します。

・使役 させる

接辞はamirまたはmirです。IR/U~IR/YUでmirを、それ以外でamirを取ります。

忘れる IR/U bacir-u-n ⇒ baci-mir-u-n 忘れさせる

覚える UIR/WA ubuir-u-n ⇒ ubw-amir-u-n 覚えさせる

 

使役文の「に」は=nkiまたは=niを使って表します。

agami=nki ubw-amir-u-n.

子供=に 覚えさせる。

ututu=nki baci-mir-u-n.

弟=に 忘れさせる。

 

amirとmirの過去形はそれぞれami-ta-n, mi-ta-nとなります。

inu=nki ubw-ami-ta-n.

犬=に 覚えさせた。

uja=nki sibakhi-mi-ta-n.

親=に 心配させた。

*心配する sibakhirun IR/YA

 

過去の-(i)ta-nの連体形は-(i)ta-ruでしたので、

ubw-ami-ta-ru munu

覚えさせたもの

sibakhi-mi-ta-ru munu

心配させたこと

 

amir, mirの連体形は直接見たことがないのでわかりませんが、おそらくamir-u, mir-uです(最後の-nを省略するだけ)。

khari=nki mut-amir-u sagi

彼=に 持たせる 酒

*持つ mutun C/YA

uja sibakhi-mir-u agami

親(を) 心配させる 子供

*「を」にあたる助詞は与那国語にはなく、常に何もつけません。ただし疑問詞(nu「何」など)が目的語の時のみ=baという助詞を使うことがあるようです。

・否定 しない

クラスに関わらずanuを使います。

anu=ya bir-anu-n.

私=は 酔いません。

*酔う birun IR/YU

 

否定の過去形はanu-ta-nです。

khari=ya bir-anu-ta-n.

彼=は 酔わなかった。

 

否定の現在・連体形は最後の-nを取ってanu, 過去・連体形はanu-ta-ruです。

anu=ya bir-anu ttu=du a-ru.

私=は 酔わない 人=ぞ ある。

私は酔わない人だ。

 

khanu-ttu=ya nnu num-anu-ta-ru ttu=du a-ru.

あの-人=は 昨日 飲まなかった 人=ぞ ある。

あの人は昨日飲まなかった人だ。

* 飲む numun C/YA