与那国語の形容詞2:連体形
さて、形容詞の続きは、連体形の話をしましょう。連体形は、「体言(名詞)に連なる」ですから、名詞に付くときに使う形です。標準語では「あの人は速い」(終止形)も「速い人」(連体形)も同じ「速い」ですが、与那国語では両者で違う語形になります。多分、琉球諸語全体でそうです。
形容詞hajan(早い/速い)を例にとりましょうか。まずは前回のを並べます。
はやい haja-n
はやかった haja-ta-n
はやくない haja-minu-n
はやくなかった haja-minu-ta-n
ここから連体形を作っていくのですが、実は連体形の作り方は二種類あります。
1.大半の動詞(形容詞も形の上では動詞の一種でしたね)は、語尾の-nを取るだけで連体形になります(numun飲む⇒numu飲む○○)。
2.一部の不規則動詞(あとで紹介します)、過去形と完了形の接辞に限って、-nを-ruに変えると連体形になります。
さて、haja-n(はやい)は、不規則動詞anが付いた形でした。このanは一部の不規則動詞に含まれるので、-nを-ruに変えると連体形です。
haja-ta-n(はやかった)とhaja-minu-ta-n(はやくなかった)は過去の接辞-ta-が付いた過去形ですから、これも-nを-ruに変えると連体形です。
haja-minu-n(はやくない)の場合、形容詞の否定を表す状態動詞minu-nは前者の「大半の動詞」に含まれます。よってminuとすれば連体形です。
さて、結果、以下のようになります。名詞munu(もの)を付けておきましょう。
はやいもの haja-ru munu
はやかったもの haja-ta-ru munu
はやくないもの haja-minu munu
はやくなかったもの haja-minu-ta-ru munu
別の形容詞niguran(怖い)を使ってまとめておきます。
nigura-n ⇒ nigura-ru munu
nigura-ta-n ⇒ nigura-ta-ru munu
nigura-minu-n ⇒ nigura-minu munu
nigura-minu-ta-n ⇒ nigura-minu-ta-ru munu