与那国語のローマ字表記について

これは雑記です。

与那国語の場合、特に強子音/喉頭化音と鼻濁音の扱いが問題になると思う。そこで、とりあえず先行研究でどのような表記が使われているかまとめてみる。参考文献は記事の一番下に書いてます。

・田窪編2013 最終章の簡易文法より

喉頭化音の扱い…語頭の場合pp, tt, cc, kkと全て二重で表記。ppとccは弱子音との対立がないが忠実に表記してある。ccun, ccarirunなど。一方で弱子音もthurasun, khirunのようにhを挟んで表記してある。ただし語中ではそうした工夫はせず(すべて喉頭化音に近く発音されるため)。

鼻濁音はŋで表記。それ以外の「ん」は全てn表記。ちなみに与那国語では語末の「ん」はŋになるらしい。

・上野善道アクセント資料

資料は複数回にわたって出されているので若干違いがあるかもしれない。ここでは2011年の動詞アクセント資料を参考にする。

喉頭化音の扱い…大文字表記。Cも大文字にしてるのが見られたので、Pも大文字になるか。

撥音は大文字N、鼻濁音はやはりŋ表記。

またシ、チ、ヒをそれぞれsji, Cji, hjiとしてある。口蓋化音としては確かにこの方が直感的。

・山田2015

これは一般向け教材ということで、与那国語をひらがなで表記してある。

喉頭化音の扱い…「’か、’た」のように表記。pとcの行は対立がないのでそのまま。

鼻濁音は「か゜、き゜、く゜」のように半濁点表記。

長母音は「ー」で表記。

・どうしよう

語頭の喉頭化音はとりあえず4つとも重ねて書けばいいと思う。長母音は母音を2つ続ければいい。基本的には発音に対して直感的な方が読みやすいはず。ただそうする場合、語頭の弱子音にhを入れる必要はないのではないかと。そうすると帯気音のように見えるので(それは筆者が中国語学習者だからかもしれないけど)。

直感性ということならsji,Cji, hjiも支持されるのかなと。

 

田窪行則編2013『琉球列島の言語と文化―その記録と継承』

上野善道2011『与那国方言動詞活用形のアクセント資料』

山田真寛2015「ラジオ体操第一ドゥナンむぬい」で覚えるドゥナンむぬい(狩俣繁久代表『琉球諸語記述文法Ⅰ』所収)