与那国語の発音2:子音

与那国語の子音の発音はだいたい標準語と同じなのですが、少し違っている部分や注意しなければならない部分があります。

*このサイトでは極力、ローマ字表記(かな表記)の形を取るようにします。それは、特に動詞の活用の話をするときに便利だからです。

・標準語と同じで構わない子音

以下の子音は、標準語通りに発音してよいと思います。

b, d, g(ば行、だ行、が行)

m, n(ま行、な行)

s, h(さ行、は行)

r(ら行)

w,j(わ行、や行)

表記について注意してほしいのは、や行をjで表している点です。与那国語には基本的に、じゃ行はありません。また、さ行はsで表すためsa, si, suとなりますが、標準語同様「さしす」と発音します。

・tとcの発音について

tで表される「た行」はta, ti, tuと表記され、見たまま「た、てぃ、とぅ」と発音します。

cで表される「つぁ行」はca, ci, cuと表記され、「つぁ、ち、つ」と発音します。

・ŋの発音について

いわゆる鼻濁音と呼ばれる子音で、鼻にかかったガ行のような音です。日本語の「ん」の発音は状況によって何種類かあるわけですが、特に「本が(ほんが)」「短歌(たんか)」などというときの「ん」です。舌の付け根の辺りが盛り上がって喉をふさぐようになるのがわかるでしょうか。与那国語では「本が」の「ん」を単独で発音できる必要があります。

ŋa, ŋi, ŋuは、上記のように舌で喉をふさいだ状態から「あ、い、う」を発音しようとすれば出ます。このサイトでは、「か゜」「き゜」「く゜」のように半濁点の丸をつけて表記します。

ちなみに、「めんま」の「ん」は唇を閉じた発音、「カンナ」の「ん」は舌先か舌の中腹を口の天井(口蓋:こうがい)や上の歯の裏にくっつけるような発音になるでしょう。

・強子音と弱子音

まず強子音は英語でFortis(硬い)とも呼ばれ、イメージとしては「っぱ」「った」のように、前に詰まる音(促音)が入るような発音でしょうか。

一方で弱子音は英語でLenis(柔らかい)とも呼ばれ、標準語と同じような「た」「か」の発音です。

強子音には p, t, c, kの4つがあり、弱子音にはt, kの二つがあります。

上の通り、t, k 「た行」「か行」は強子音と弱子音を区別しなければなりません。p, c 「ぱ行」「つぁ行」は必ず強子音で発音されます。そしてこの区別は単語の頭にしかありません。単語の頭以外の場所では常に強子音に近い発音になります。

以上を踏まえて、このサイトでは以下のように表記します。

1.強子音は子音を二つ重ねて表記します。ppa, tti, ccuのように。かなでは「'ぱ」「'てぃ」のように頭に「'」を付けます。

2.弱子音はhを挟んで表記します。tha, khiのように。息を強く吐き出す有気音を想像する表記ですが、普通の「た」「き」です。かなでもそのように表記します。

3.強弱の区別は語頭にしかないので、語中では強弱に関わりなくp, tなど単独で表記します。satunのように。発音はsattunに近くなります。かなでは「さとぅん」のように見たまま表記します。

*実はまだ強子音がどのように発音されているのか、よくわかっていないようです。(無気)喉頭化音という言い方がありますが、これは喉を緊張させたり声門を閉じて発音する音という意味です。しかしそのように強子音が発音されているという確証はないため、強子音という便宜的な呼び方もあるのです。