与那国語の発音4:音調(アクセント)のための予備知識

まずこのページでは、アクセントとモーラ・音節について説明します。もう知ってるよという方は、「与那国語の発音5:音調(アクセント)」に進んでください。

・アクセント

標準語には俗に「イントネーション」と呼ばれているものがあります。「関東と関西でイントネーションが違う」と言いますね。言語学では、そのイントネーションは「アクセント」と呼んでいます。アクセントとイントネーションの違いは説明するのがめんどくさいので、興味のある方は各自で調べてみてください(投げやり)。

アクセントというのを例で説明しましょう。太字で書いてある字を高く発音してください。

標準語ではチョップスティックの箸を「し」、ブリッジの橋を「は」と読みますね。これはどっちを高く発音するか区別しないと、意味が変わってしまいます。さらに橋と端はどちらも「は」ですが、「橋が」「端が」ですと「はが」「はしが」のようになって、隠れていた区別が出現することもあります。これも、音自体はどちらも「はしが」なので、高く発音する部分を間違えると意味が変わってしまいます。ちなみに「箸が」は「しが」ですね。このアクセントを東京式アクセントと呼びます。

*筆者は大阪人なので大阪方言も書いておきましょう。箸「は」、橋「し」、端「はし」。箸が「はが」、橋が「しが」、端が「はしが」。このアクセントを京阪式アクセントと呼びます。アクセントは地域差や年代差が大きいので、違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。

*アクセントは、必ずしも意味の弁別とは関係しません。例えば「ことば」は「ことば」(東京式)ですが、東京式の文脈の中で「とば」(京阪式)と言っても別の意味にとられることはないでしょう。別に「ことば」「こば」「こと」などと言っても通じはするのです。このようにアクセントは、意味の区別に必要な場合とそうでない場合があります。意味の区別に必要なくても、東京式では「ことば」と発音するということは決まっているのです。

・モーラ(拍)と音節

単語の長さを数えるとき、モーラと音節という二つの方法があります。そして日本語は多くの方言でモーラという方法を使って長さを数えています。

1.モーラ

モーガン」という語は、「も・お・が・ん」という具合に四つに分割されます。つまりモーガンは4モーラなのです。伸ばす音や「ん」、あるいは小さい「っ」も一つのモーラになります。別の例では、「葛藤」は発音が「カットー」で、「か・っ・と・お」と4モーラになります。

2.音節

音節を単位にして数えると、モーガンは「モー・ガン」と2音節になります。葛藤は「カッ・トー」とこちらも2音節。モーラだと4モーラですが2音節になります。日本語においてモーラと音節の違いは、「伸ばす音、ん、っ」の扱いの違いだということができるでしょう。

では、以上の知識を踏まえて、次のページでは与那国語のアクセントについて解説します。