与那国語の発音5:音調(アクセント)

この記事を読むにあたって、前の記事「与那国語の発音4」にて日本語におけるアクセントとモーラ・音節に関するごく基本的なことを解説しています。

与那国語のアクセントは3種類

まず、与那国語は基本的には音節で単語数を数える方言だといえると思います(確証はないですが)。標準語や関西方言はモーラで数えますが、鹿児島方言や東北方言も音節で数える方言だと言われています。

与那国語には3パターンのアクセントがあることが知られています。A型、B型、C型と言われたり、高型、低型、下降型と言われたりします。後者の方が直感的なので、このサイトでは高型・低型・下降型という呼び方にします。

 そして、与那国語では1音節の単語は常に長母音で発音されます。「木」は「きー」、「名」は「なー」となるわけです。

・高型

これは単語が1音節の場合と2音節以上の場合で区別があります。

1音節の場合、全体的に高く発音されます。名前の「名」はnaa(なー)で高く読みます。

2音節以上の場合、最初の音節だけ低く読んで、後は高くなります。「橋」はhaci(は)となり、「庭」minaga(みなが)となります。

・低型

これは何音節であっても低く発音します。「木」はkii(きー)、「花」はhana(はな)です。

・下降型

これは少し変わった振る舞いをします。

1音節であれば、「豚」waa(ー)、「針」hai(い)は高いところから落ちるように発音します。

 2音節以上の場合、2通りに分かれます。

①最後の音節が1モーラの場合、高型と同じになります。「箸」はhaci(は)、「山亀」はdamami(だまみ)です。

②最後の音節が2モーラの場合、その最後の音節で下降します。「髪」はkaran「かん」のようになります。

・橋と箸:隠れた音調

さて、上で見たように橋はhaci、箸もhaciです。しかし橋は高型、箸は下降型の項目でそれぞれ言及しています。なぜか?

ここで、「AもBも」などで使う「~も」に当たる与那国語「n」を後ろにつけてみますと、以下のようになります。

橋 haci ⇒ 橋も hacinちん

箸 haci ⇒ 箸も hacin は

つまり、「hacin」とすることで最後の音節が1モーラから2モーラになり、①から②に変わることで下降調が現れるのです。この現象を見越して、橋と箸は分類分けされているということです。

*ただしこの3種類に当てはまらない名詞があったり、複合名詞の問題があったり、さらに言えば動詞や形容詞にもアクセントはあるので、実はもっと難しいのですが、そのあたりは書いている本人もわかっていないのです…。